アジャイルプロジェクト管理とは、プロジェクトの完了・納品を成功に導く、フィードバックを主体にした反復的アプローチです。 最も評価が高いプロジェクト管理法の1つで、プロジェクトを段階的に進め、フィードバックを優先させ、変更を徐々に行い、プロジェクトの完了の加速化と顧客満足度の向上を目指します。 

アジャイル管理法は、ペースが速いながらも情報に基づいた方法でチームがプロジェクトに尽力できる共同作業環境を育みます。 プロジェクトをクイックスプリントと呼ばれる2~4週間のサイクルに分割します。チームには、目に見えるかたちでプロジェクトを進めて、次の段階に進む前に完了した仕事を振り返る十分な時間を与えます。

これはウォーターフォールクリティカルパス法(CPM)などの、プロジェクトの開始から完了までを計画・実行し、その後でフィードバックを得て、次のプロジェクトに移る、従来の連続的なプロジェクト管理アプローチとは異なります。 

このアプローチの違いから、柔軟性と俊敏性が不可欠なプロジェクトには、アジャイル方式がピッタリだと言えます。 スコープ、制約、要件がまだはっきりと決まっていない、または分かっていないプロジェクトは、アジャイルプロジェクト管理を活用して実施するのが最適です。 

本記事では、組織でアジャイルプロジェクト管理を実践するために必要な知識をすべて紹介します。 取り上げるのは以下の内容です。 

  • アジャイルプロジェクト管理の恩恵を受けるのはだれか
  • アジャイルプロジェクト管理の実践で優先するべき価値 
  • アジャイルプロジェクト管理の重要要素
  • アジャイルプロジェクト管理法の原則
  • 現在、最も評価の高いアジャイルプロジェクト管理法
  • アジャイルプロジェクト管理の導入にWrikeがどのように役立つか 

さあ、始めましょう!

アジャイルプロジェクト管理の恩恵を受けるのはだれか

アジャイルプロジェクト管理法は、もともとソフトウェア開発者が開発チームのために構築したものでした。 目標は可能な限り短時間で最高のアウトプットを出せるシステムを構築することでした。 

ソフトウェアのクライアントは、期待されている製品の理想のかたちについて明確な考えを持っていないことが多いため、開発チームは要件を調整し、成果物を改善し、可能な限り最高の成果を生み出すために、クライアントのニーズに柔軟に対応できるシステムが必要なのです。

ここ何年も、斬新で差別化された製品を一貫して生み出してきたペースの速い他の組織や業界は(ソフトウェア開発などで)、アジャイルプロジェクト管理法を採用し、プロジェクトの立上げと実行を加速化しています。 不確実性、目新しさ、制約、その他の複雑性に対応するマーケティングチームや、プロフェッショナルサービスの提供者、企業はアジャイルプロジェクト管理のフレームワークを用いることで、多大な恩恵を受けられます。 

普段からチームの成果物を定義することや、最後まで思い描くことが難しいなら、アジャイルプロジェクト管理がチームに最適だと考えるといいでしょう。 プロジェクトを開始し、進めながら曖昧な点を明確にする余地が生まれます。

アジャイルの4つの価値

アジャイルプロジェクト管理は、2001年にソフトウェア開発者のグループがアジャイルを目指す他のチームのガイドとして作成したアジャイルマニフェストにまとめられている4つの価値と12の原則に従います。 

その4つの価値とは以下のとおりです。

  1. プロセスやツールよりも個人や連携を優先する:アジャイルプロジェクト管理の中心的原則の1つは、厳密な手順や「実施方法」よりも定期的なコミュニケーションや対話を選ぶことです。 アジャイルプロジェクト管理では、サイロ内で長時間働くよりもクライアントやチームメンバーと継続的で時宜を得たコミュニケーションが奨励されます。
  2. 包括的なドキュメントよりも動くソフトウェアを優先する:アジャイルチームはソフトウェアを用いてデータの管理・更新・同期を行い、プロジェクトの遂行状態と成果物を改善します。 事務作業や昔ながらの文書作りのみに頼るのではなく、アジャイル方式では、仕事を完了させるために必要なものを、マイクロマネジメントすることなくチームに提供することを推奨しています。 
  3. 契約交渉よりも顧客とのコラボレーションを優先する:アジャイルプロジェクト管理は顧客とのコラボレーションを支持しています。最終製品が顧客のニーズや期待に確実に応えられるように、開発や生産プロセス全体に関与してもらうのです。 これを実践するには、クライアントと定期的に会話をし、クライアントに最新情報を提供して、成果物やマイルストーンに関するフィードバックを得る必要があります。 
  4. 計画に従うことよりも変化に対応することを優先する:この価値は技術面でのアジャイル法の原則であり、確定されているプロジェクト計画に従うよりも、フィードバックを定期的に受け取ることと適応性を重視しています。 これにより、アジャイルチームは新しい要件に迅速に対応し、プロジェクトの課題に取り組めるのです。 

アジャイルプロジェクト管理の重要要素とは

アジャイルプロジェクト管理には、プロセス全体をまとめ、それを機能させる5つの重要な要素があります。 以下でそれらを説明します。 

1. ユーザーストーリー

ユーザーストーリ―はアジャイルプロジェクト内の最小作業単位です。 それらを合わせたものが、プロジェクトまたは製品の全体的な目標とアウトプットになります。 ユーザーストーリ―それぞれが、プロジェクトを完了するために実行するタスクを説明します。  

ユーザーストーリーは、アジャイルプロジェクト管理のもう一つの重要要素であるプロダクトバックログにまとめられ、並べ替えられます。 各ストーリーはチームが理解できるかたちで、タスクの所期の成果の概略を示します。 期待される成果の詳細が含まれているため、開発チームは達成に必要な労力を見積もれます。

注意しておきたいのが、ユーザーストーリーはその名の通り、一般的にユーザーの視点から書かれることです。 クライアントがだれか、何が求められているのか、それがなぜ必要とされているのかが要約されています。

2. スプリント

スプリントは1~4週間のサイクルです。この間にアジャイルチームは現在のスプリント内のタスクに取り組み、最後には実行した仕事を振り返り、直後に次のスプリントを計画します。 

スプリントの長さはチームによって異なります。 チームが集中力を保てるぐらい短い、しかし価値あるものを創造するのに十分な時間が取れるぐらい長いサイクルで仕事をするのが最適です。 

スプリントの一貫性を保つことが、アジャイルチームが目標達成に向けて継続して協調・反復する方法です。 特定のスプリントに割り当てられたタスクのみが、そのスプリント中に実行されます。 

3. 定例ミーティング

アジャイルの4つの価値が示すように、定期的なコミュニケーションと機能横断型コラボレーションはアジャイル法の基礎です。 アジャイルチームが最適な方法で実施すべき定例ミーティングは4種類あります。 以下でそれらを説明します。

  • 毎日のスタンドアップミーティング:毎日のスタンドアップミーティングは、チームメンバーがスプリント内の進捗を互いに更新する簡単なグループ内報告会です。 昨日したこと、本日の計画、明日の予定が焦点です。 これにより全員が最新情報を得て、スプリントを正常に終えるためにするべき最重要課題を認識し続けることができます。 
  • スプリント計画ミーティング:スプリント計画ミーティングは新しいスプリントの開始前に開催します。 関わっているチームメンバーが集まり、次のスプリントのスコープ、目標、タスク、成果物を緻密に計画します。  
  • スプリントレビュー:スプリントレビューはスプリント後に開催する2つのミーティングのうちの1つです。 スプリントレビューでは、スプリントでの成果のデモを行い、クライアント、マネージャー、ステークホルダーからのフィードバックを収集します。 開発チームはスプリントの成果物の完全な機能を実証し、良好な点と改善すべき点に関するフィードバックを収集します。 
  • スプリントの振り返り:スプリントごとの最終アジャイルミーティングとしてスプリントレビュー後に開催するのがスプリントの振り返りミーティングです。 このミーティングで、チームは以前のスプリントの進行をレビューします。 割り当てやプロセスでうまく機能した点と、改善すべき項目を記録します。 また、次のスプリントに持ち越す必要のあるタスクやバックログで優先すべきタスクを決定します。 

4. かんばんボード

かんばんボードはプロジェクトを完了するために実行するタスクを視覚化するものです。 かんばんボードを使うと、プロジェクトの進捗の追跡と各スプリントの作業負荷の管理が容易にできます。 かんばんボードはハードでもソフトでも構いません。 オフィスで仕事をしているチームの場合は、ホワイトボードや壁に付箋を貼り付けても良いでしょう。 

よく使用されるかんばんボードはデジタルで、チームはどこからでもアクセスと更新ができます。 Wrikeのようなプロジェクト管理ソフトウェアは使いやすいかんばんボードをアジャイルチームに提供し、プロジェクトの取りまとめと、内部および外部ステークホルダーとのシームレスな最新情報のやり取りやコラボレーションを実現します。

5. プロダクトバックログ

プロダクトバックログには、プロジェクトを完了するために実行する全タスクがまとめられています。 プロダクトバックログのすべてのタスクが実行されるわけではないので、この段階ではタスクの優先付けが重要です。 リクエスト受け入れシステムからユーザーストーリーが追加されると、チームはそれぞれのユーザーストーリーの点数を見積り、現在のスプリントで終わらせるべきものと、遅らせられるものとの優先順位をつけます。 

スプリント計画ミーティング中に、バックログのストーリーを次のスプリントに移動させると完了します。 このプロセスを管理し、チームがプロジェクト全体を進行させる最も重要なタスクに確実に取り組めるようにするには、バックログの調整が不可欠です。 

What Is Agile Project Management? 2
写真提供: エデン・コンスタンティーノ氏Unsplash

アジャイルの12の原則

アジャイル方式を堅実なプロジェクト管理のアプローチにしている原則を手短に紹介します。 以下がその12の原則です。 

  1. 最優先事項は顧客満足で、価値のあるソフトウェアを早く継続的に提供する。アジャイルプロジェクト管理は顧客満足を第一とし、プロジェクトの最終段階だけでなく、プロジェクトを通じて段階的に結果を出すことを優先します。
  2. 開発後半であっても、要件の変更を受け入れる。 アジャイルプロセスでは変更を利用して顧客の競争優位性を向上させる。アジャイルプロジェクト管理では、開発サイクルのいかなる時でも変更を渋ることはありません。 顧客満足が優先されるので、フィードバックや変更要求を歓迎し、最高の結果を出します。 
  3. 動くソフトウェアを数週間から数か月という短い間隔で頻繁に提供する。この原則は、アジャイルプロジェクトには継続的な反復と段階的な改善が必要であることを強調しています。 レビューやフィードバックがないまま長期間待機するのではなく、定期的な日程で設定した更新を一般的にはスプリント後に行います。
  4. ビジネス関係者および開発者は、プロジェクト全体を通して日々協力しなければならない。アジャイルプロジェクト管理では、プロジェクト全体でのチームの協力を促進します。 関係しているすべてのチームがタッグを組んで確実に作業をしていることを確認することで、プロジェクトの進捗が加速化します。
  5. やる気のある人材でプロジェクトを構築し、 彼らが必要とする環境とサポートを提供して、作業を完了できると信頼する。アジャイルプロジェクト管理チームは、責任感があり、自らのタスクに対して当事者意識を持つ自発的なメンバーで構成します。 このような人々をチームに入れ、彼らが自主的に仕事に取り組むために必要なリソースを提供します。 
  6. 開発チームに対して、また開発チーム内で情報を伝達する最も効率的で効果的な方法は対面で話すこと。 対面での会話が正しい情報を伝える最も信頼できる方法です。 オフィス内でもビデオ会議でも、生のコミュニケーションがチームメンバーの足並みをそろえるのに役立ち、彼らは期待通りの役割を果たせます。 
  7. 動くソフトウェアが進捗の最も重要な尺度である。アジャイル法はソフトウェア開発者のために構築されたので、「動くソフトウェア」が最終成果物になっています。 非ソフトウェアチームの場合、「期待されている成果物の最も機能するバージョンの創造が進捗の最も需要な尺度である」と読み替えることができます。 
  8. アジャイルプロセスは持続可能な開発を促進する。 スポンサー、開発者、ユーザーは一定のペースを継続的に維持できるようにしなければならない。アジャイルプロジェクト管理は皮肉なことに、「スプリント」ではなくマラソンと捉えるべきです。 プロジェクトを完了に向けて着実に進めるために、勢いとペースを維持しなければなりません。 
  9. 優れた技術やデザインに常に目を向けることで機敏性を向上する。アジャイルプロジェクト管理では、細部への注意力と卓越性が必要とされます。 チームは毎スプリントおよび毎プロジェクトで常に向上しなければなりません。 すべての新規スプリントとプロジェクトが物事を改善させる機会になります。 
  10. シンプルさ - 実行しない仕事量を最大にする技 - が本質である。優先度の低い目標および作業は、バックログに受け入れられた目標および作業とまったく同様に重要なものです。 アジャイルプロジェクト管理は本質に焦点をあてることを要求します。 不必要な複雑さは、顧客の要件をスケジュール通りに満足するために排除しなければなりません。 
  11. 最高のアーキテクチャ、要件、デザインは自主性を持ったチームから生まれる。アジャイルプロジェクト管理チームは、モチベーションが高い自律的なチームです。 メンバーはマネージャーとの良い関係を構築し、プロジェクトへの当事者意識を持つことを推奨されます。 スクラムのようなアジャイルアプローチでは、チームの役割を指定し、優先度を設定しやすくします。これはプロジェクトマネージャーの助けになります。 
  12. チームはより効果的な方法を定期的に反映し、状況に合わせて行動を調整する。アジャイル方式では、スプリントレビューやスプリントの振り返りなどの定期的なコミュニケーションとミーティングを介してフィードバックを収集し、変更を実施します。そうして、プロジェクトが成功裏に完了します。 

最も使用されるアジャイルプロジェクト管理法とは

アジャイルプロジェクト管理で重要なのは、プロジェクトの変更への柔軟性と適応性です。 したがって、アジャイルチームすべてが厳格な手法を使用しているわけではありません。 アジャイルを実践する3つの一般的な方法を紹介します。 

かんばんボード

かんばんボードはプロジェクトを管理するシンプルで視覚化されたコラボレーションを実行する手段を提供するため、メンバーはプロジェクトの進捗の表示や評価が簡単にでき、次にすべきことをすぐに認識できます。 プロジェクトのワークフローが見える化されるので、さまざまなタスクがどの段階にあるのか分かります。

かんばんボードは一般的に「To Do」、「実行中」、「完了済」の3列に分割されます。 これらの列により完了までのプロジェクトのステータスが視覚化されます。 かんばんボードでは、プロジェクトまたはスプリントの障害を簡単に特定できます。 

かんばんボードはアジャイルチームが足並みをそろえ、プロジェクトの進捗を明確に理解するのに役立つ一方で、タスク完了までにかかる時間に焦点を当てていません。 アジャイル方式のフレームワークとして、かんばんボードはスプリントの実施にはあまり注意を向けず、それよりもタスクの視覚化とチーム全体でのタスクの割り当てに重きを置いています。 (スクラムのように)時間を基準としたスプリントで作業を制限する代わりに、作業負荷で作業を制限します。 言い換えれば、メンバーは割り当てられたタスク数を増やさない限り、完了すべきタスクをいつでも切り替えられるのです。  

スクラム

ほとんどのプロジェクトマネージャーは、スクラムが最も評価の高いアジャイル方式である可能性が高いことに納得するでしょう。 スクラムは1~4週のスプリントで作業を完了させるアジャイルフレームワークです。 自己組織的なチームが緊密に協力し、成功を収めます。 

スクラムチームはプロジェクト要件のリストをバックログにまとめます。 ここから、メンバーは次のスプリントで達成すべきタスクを決定します。 スプリントのタスクが決定されると、スプリントはロック済みになり、新規タスクが引き続きバックログにまとめられます。 

機能的な最終成果物が完了した時点で、各スプリントは終了します。 スプリントをクローズするために、スクラムチームは集まってプロセスと結果をレビューし、次のスプリントを計画します。 かんばんボードに似たスクラムボードを使って、タスクを列にグループ化して進捗を示します。 かんばんとは異なり、スクラムではプロジェクトをスプリントに分割し、1度に1スプリントしか計画・実行しません。 

スクラムばん

スクラムばんは、スクラムとかんばんという2つの一般的なアジャイルプロジェクト管理法を組み合わせたものです。 かんばんは柔軟すぎるし、スクラムは堅持すぎると思うチームのために開発されました。

スクラムばんは、作業の計画・取りまとめ・割り当てに関するスクラムのバックログアプローチに、進行中のプロジェクトを見える化するかんばんボードの機能を組み合わせているので、プロジェクトの進捗を視覚化し、問題を適宜に特定することができます。 スクラムばんでは、時間を基準としたスプリントを維持してもいいですし、作業負荷で制限して作業をしても構いません。 

ほかの人気のあるアジャイルプロジェクト管理法は、ここで確認できます。 

アジャイルプロジェクト管理の導入にWrikeがどのように役立つか 

Wrikeは、あらゆる規模のチームに強力で使いやすいアジャイルプロジェクト管理ソフトウェアを提供します。 

フレームワークの使用やチーム移行の経験の有無にかかわらず、Wrikeを使用すれば、組織全体でアジャイルプロジェクト管理法を簡単に採用および拡張できます。 Wrikeのアジャイルチームワークテンプレートは、送信リクエストの収集、プロダクトバックログの整理、効率的なスプリントの実行の一助となり、顧客のニーズを常に確実に満たすことで、ユーザーを成功へと導きます。 

チームメンバーが特定のタスクを完了させるのにかかる時間を楽に追跡でき、将来のスプリント計画の質を高められます。ステークホルダーをWrikeの作業スペースに招待すれば、Wrike内で定期的に簡単にコミュニケーションが取れます。

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